2020年度新歓インタビュー企画、『劇研の声』。4回目となる本日のテーマは「演劇だけじゃない!」。意欲的に演劇活動をするかたわらで、他の活動にも励んでいる劇研員がいます。
演劇以外を諦める前に
佐久間喜望 早稲田大学演劇研究会19‘年度新人試演会『凡凡BonBon』撮影:谷水更
早大劇研では、サークルを兼任することや演劇以外で活動することを不可とはしていません。そこで今回は、演劇はもちろんのこと、演劇以外の活動にも精力的な劇研員はどのようにやりくりをしてきたのか、お話を聞きました。
劇研員インタビュー
本日は、演劇活動だけでなく、ボランティアや勉学などにも励んでいる佐久間喜望さんにお越しいただきました。
佐久間喜望(さくま きの)
2019年、早稲田大学演劇研究に入会。その年の新人試演会『凡凡BonBon』に出演。
露と枕vol.3『煙霞の癖』では照明操作を担当。
法政大学二部演劇研究会では、これまで6作品に出演。
優先順位を持つ
―軽く自己紹介をお願いします。
佐久間 早稲田大学演劇研究会2年代の佐久間喜望と申します。お願いします。
演劇以外では法政大学でVSP(ボランティア支援プロジェクト)という大学の学生スタッフとしてボランティアをやっています。そのつながりで子ども食堂のお手伝いなど、子ども居場所事業にも参加しています。あとは教員免許取得のための勉強をしたり、哲学の勉強も色々としています。勉学関係とボランティアが多いですね。
早稲田大学演劇研究会19‘年度新人試演会『凡凡BonBon』撮影:谷水更
―劇研と他の活動は両立できますか?
佐久間 答えとしては“やり方次第で両立可能”です。出来てると思ってるので続けてる。でもやっぱり迷惑かけてる可能性は絶対あるのでそれは覚悟しなくちゃいけないなと思ってます。大事なのは自分の中で優先順位を持つことで、私にとっては演劇が最優先。稽古があるのでと言うと了承してもらえるところと両立できているのだと思います。絶対ここを優先してねっていうところと両立するのは正直厳しいです。部活とかとは本当に大変だと思うんですけど、他にもやりたいことがあればそこの人と相談したり、自分の中にこの時はこっちを優先するけどこの時はこっちを優先するみたいな場合分けができていれば両立はできるかなと。
―様々な活動をするのは大変そうですが、なぜできているのでしょうか。
佐久間 根本的にやりたいこととつながってるから。劇研に入ってからできた「面白いは正義」という信念があるんです。授業は面白い方が伝わるし、演劇も面白い作品の方が見に行くじゃないですか。自分の「面白い」をつきつめるのもそうだし、人の「面白い」も知ってそれに近づけて発信していくのもすごく大事。ボランティアも面白いを起点にやるのが正しいと思ってますし。その信念が根底にあるから演劇を中心に他のボランティアや教員免許取得のための勉強もできるのかな。
伝えようとする力はどんな活動でも大事
―演劇の次に力を入れているというボランティア活動をはじめたきっかけは?
佐久間 もともとエコキャップ回収に興味があったんです。高校時代に入っていた生徒会では目的がよくわからないままエコキャップ回収をやっていて。ちゃんと考えて取り組まないといけないことなんだなと思って大学生になってからいろいろな人に話を聞いたりして調べたりするようになりました。
佐久間喜望 エコキャップ回収風景
ボランティアは義務でやるものではないと思います。高校では基本的にキャップ回収は義務感でやっていて、悪くはないのですが、ただ良いことだと信じてやってしまっていたので、自分の中に一つ意味を持っていないと何か起きたときに対処できないなと感じました。
―他の活動が演劇に還元できたこと、演劇の活動が他の活動に還元できたことはありますか?もちろんなくても構いません。
佐久間 実はめちゃめちゃあって。まず他の活動に還元できたことから。伝えようとする力はどんな活動でも大事で。ボランティア活動でも前に立って企画について話すとかならこの企画でこういうことをしたいとかを話す。それがこの役としてこれを伝えたいとか何にフォーカスを当てて伝えるかを明確にする作業は工程は違っても同じ力だからつながっている。
早稲田大学演劇研究会19‘年度新人試演会『凡凡BonBon』撮影:谷水更
あとは教職の授業で出会った面白い先生が授業をエンタメにしようって言っていて。教えなきゃいけないことは限られていても枠の中のものをどれだけ抽出して自分の身体を有効活用して生徒に届けられるかが大事で。それをエンタメにしたほうが面白いし面白い方が学びになるじゃんと。その感覚は演劇につながっているなと思います。
逆もまた然りで、演劇では表現を学び、新人訓練では自分と向き合う。自分のことを知って、自分のやり方で自分にとっての○○を自分の形で伝えようとする。
模擬授業も一緒で。伝えなきゃいけない枠がある中で、もちろん典型的に伝えるのも大事なんですけど、自分を通して相手に伝えるのも大事。伝える力は演劇を通して身についたことですね。
―なぜ演劇をやろうと?
佐久間 家族が演劇に携わっているのは大きいです。特に姉が演劇部だったことには強い影響を受けています。姉が大好きで、そんな姉が演劇をやっている姿がかっこよくて小学生のころから演劇をやってみたいと思っていました。中学生になると、部活ではないのですが外部の演劇ワークショップとか、演劇につながるものによく参加していましたね。高校では演劇部に入りました。
―なぜ劇研へ?
佐久間 東京に行くことを決めた高2、高3のころには劇研の存在は知っていたので早稲田を目指していたのですが落ちてしまって、受かった法政大学に行くことを決めました。浪人しなかったのは法政でもどうしてもやりたかった哲学ができるし、早稲田にも近かったからです。
で、上京したのですが、こっちにきて一年目には劇研に入らなかった。自分でも不思議ですね。でも2018年の12月にボクナリ#2『GOLDEN OVER AGE』を観劇して、劇研って面白い、こういう人に囲まれたいと。私は劇研に入りたいと思っていたのですが、早稲田演劇界隈は優しくて、他の演劇サークルも見て考えた方がいいよと言われたので他の新人訓練ある団体のワークショップやおためし稽古などの新歓イベントには参加しました。色々見て、やはり劇研の公演で心を撃ち抜かれて劇研に決めましたね。
ボクナリ#2『GOLDEN OVER AGE』
―劇研はどんな場所ですか?
佐久間 演劇を本気でやりたい人が集まる場所ですね。劇研には将来的に演劇をやりたい人も卒業後は就職するけど大学の間は演劇を本気でやりたい人もいます。とにかく演劇に興味があって、名が知れている劇研や他の早稲田演劇サークルに入るんだという人が集まっています。スタッフワークもできます。
―今興味のあるスタッフのセクションは?
佐久間 自分の信念に近いと思っているのは制作です。事務作業が多いのですが、広報ではどうやったら伝えられるかを考えるので。ただ、言ってしまえば大抵のセクションはどう伝えるかを考えるクリエイティビティが求められる職務なので自分の信念にはつながっていますね(笑) 役者一本に絞っていなくて演劇に携わりたい人は演劇界隈で足りていないスタッフもできるようになれたらいいのかなと思います。
―劇研は卒業時期が設けられていませんよね、今も劇研を続けている理由を教えてください
佐久間 一番は、私は人に惚れやすくて、劇研員に惚れている節があります(笑) 同期大嫌いって言ってるんですけど好きの裏返しで。同期も先輩方も好きで。私の信念の一つとして好きな人と好きなことをやりたいっていうのがあって。どの団体の人も大好きなんですけど特に劇研は新人訓練の期間でお互いを知る時間が長かったからこそよりその人を知れて好きになる。 まあ同時に嫌な面もいっぱい見るしむかつくってこともあるんですけどそういうむかつく!とか嫉妬心も自分の向上心につながるところもあって。そういう空間に身を置くってことは大事だし、手放したくないと思ってます。
―人で動くタイプ?
佐久間 本当にそうですね。すごく人で動くタイプだと思います。この人が好きだからこの活動したいとか。前のインタビューで奥泉さんが小林桃香さんが面白いと思って入ったと仰っていましたが共感できるところがあります。
面白いは正義
―今後挑戦してみたいことはありますか?
佐久間 具体的なことを言うと、サルトルなどの思想家が好きなので、YouTubeで思想家のお面を作って演じて紹介する勉強動画をアップしたいなと思っています。なんだこいつ、バカかよと思いつつ学びになるようなコンテンツを目指したい。好きだから発信したいだけだけどそれも面白さがあればみんなに伝わるはず。
将来はエンターテイナーでありたいっていうのは奥泉さんや沙千帆さんと一緒です。(第2回インタビュー参照) 好きな人と好きなことをしていたい。
それプラス今の信念である「面白いは正義」を体現したいです。サルトルは自由のあり方を思想で述べるだけでなく体現していたのがすごくかっこいいなと思っていて。私も自分の信念を体現して生きていきたい。まだ学生なので今のうちに正義とは何か、面白いとは何かを大学で学んでいくのを通して自分の中で突き詰めて体現していけるようになりたいですね。
―演劇を本気でやりたい気持ちがあるけどどうしても取り組みたい他のことがある方に向けてひとことお願いします。
佐久間 両立が難しそうって思っちゃうかもしれないけど、そう思ったまま終わるのはもったいないのでまずは挑戦してほしいです。やっていく中で自分が本当にやりたいものをはっきりさせればこれを軸に他のことはプラスとしてやろうっていうのが決められる。演劇への熱意があるならぜひ早稲田演劇界隈を色々見てみてください。劇研のみならず早稲田演劇サークルのどこかに所属するとなれば私としても早稲田演劇全体としても幸いなことです。
佐久間喜望さん、ありがとうございました!
次回のテーマは「アンサンブルでやっていくということ」です。早大劇研のアンサンブルについてお話を聞きます。
9月1日更新予定です。お楽しみに!
【早大劇研2020年度新人募集】
18歳以上。
大学、所属、経歴、一切不問。
例年の入会までの流れ、新人訓練などについてはこちら。
今年度新人訓練は10月25日スタート。新人試演会は2月21日。(変更しました。)
最新情報は公式Twitterで公開。
新歓イベントや新人訓練等の詳細は今後の新歓スケジュールページにて。
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